心臓外科医の練習について
ネットサーフィンしていて面白い記事がありました。
若手の心臓外科医がどのように手術の練習をするか、そして画期的な練習装置を開発した人の話です。
一部抜粋して記載します。
外科手術の中でも難易度の高い心臓血管の縫合。その技術をトレーニングするための革新的なマシンを、1人の若者が生み出した。彼はさらに、マシンを使った これまでにないトレーニングシステムを考案。いま、世界の心臓外科医を巻き込んでデファクトスタンダードを構築しようとしている。
心臓外科医の若手は日々、どのようなトレーニングで自分の腕を磨いているのか。かつてはいったん人工心肺に切り替えてから手術が行われていた心臓外科手術だが、最近では患者の体の負担を考慮して、心臓を動かしたまま行うのが主流になっている。
比較的、人間の心臓と形が似ている豚の心臓や、模擬心臓が埋め込まれたマネキンなどを使ってトレーニングをすることはできる。しかし、それなりのお金がかかるので、必然的に若手のトレーニング回数は限定される。
彼ら(若手の心臓外科医)は日々、木綿豆腐や食堂に置いてあるナプキンを縫っていたのである。形は心臓とは似ても似つかないし、拍動もしない。素人から見ても効果的な練習とは思えないが、いずれくる本番のために手技を高めなくては、という若手医師の必死さの表れだった。
( )内は筆者注記
若手の心臓外科医は色々と工夫しながら頑張ってるんだなって感動しましたし、そういった若手を助けようとする技術者がいることも素晴らしいと思いました。
そこで、自分が鍼灸の専門学校に通っていた間にどういう練習をしていたか思いだしてみました。
結構色々やってたんだなって感慨深かったです。
銀の鍼
銀の匙(さじ)ならぬ銀の鍼を使って練習しました。
銀で出来た鍼はとても柔らかく、まっすぐ力が加わらないとすぐに曲がってしまいます。
思ったところにきちんと鍼を打とうとすると、鍼の軸に対してまっすぐ力が加わるように加減をしなければなりません。
普段はステンレス製の鍼を使うのですが、ステンレスは曲がりにくいので、逆に上手くなれません。
銀製のとても細い鍼で練習してから、ステンレス製の鍼にかえて練習しました。
学生時代は教材として購入した練習台を使っていました
固さの異なる薄いシリコンが板状になったものを重ねて鍼を垂直に打てるかどうかを練習するのです。
それらの順番を入れ替えて、表面が固い場合や柔らかい場合など、人間の体を想定して練習しました。
また、小さな丸い穴の開いた紙を間にはさんで、触感でその穴を把握できるかも練習しました。
その練習は骨と筋との境目や、関節、仙骨のように穴の開いた場所を触知できるようにするのが目標でした。
そして、筋肉でも硬い所や柔らかい所があって、時には筋状(すじじょう)になった場合もあるので、それらを指先で識別して打てるようにするという練習にもなりました。結構難しかったので自宅に持ち帰って練習していた記憶があります。
昔の鍼灸師は「ぬか枕」といって、ぬかを炒ってから冷やしたものを枕のようにして練習したようです。
いまでもそういう練習をする学校もあります。
かまぼこ板での練習
あと練習として面白いと思われる練習方法のは、これも古くからある方法なのですが、「浮きもの通し」と「固もの通し」です。
「浮きもの通し」は水を張ったボールや洗面器に野菜や果物を浮かべて、その不安定な野菜や果物に鍼を打つ練習をするのです。
実際にやったことがありますが、とても不安定なのでまっすぐ鍼を打つというのは難しいですし、トマトは柔らかいので打ちやすいのですが、リンゴ等は固いので打ちにくくなります。
「固もの通し」は木の板に鍼を打つ練習をする方法です。
桐や杉、バルサ材を使う人が多いようですが、私は買いに行くのが面倒くさかったのでカマボコ板で練習してました。
とても固いのでまっすぐ打ち込むというのが大変難しかったと記憶しています。
自分の脚が一番
家にある色々なものに鍼を打って練習していた記憶がありますが、一番練習したのは自分の脚でした。
右手で右手に打つことは出来ませんし、脚であれば両手を使って打つことが出来たからです。そして自分の技量がなければ打つ時の痛みが出るので、恰好の練習台となったわけです。
心臓外科医は相手が生きた人間ですし、拍動しているので簡単に練習する、というわけにもいきません。
その点鍼灸師は自分の脚で練習できるので、まだ救われてますね。
片手で打つ練習も
実は片手で鍼を打てるように練習したこともありました。怪我をして片手で打てないと困ると思ったのと、右利きのために自分の右手に打つには左手一本で打てる方が良いと思ったからです。学生時代に周りに聞いたのですが、片手で打つ練習をしていたのは私だけだったようです。
怪我をした時でも打てるようにと思って練習していたのですが、出来るだけ怪我をしないように気をつけた方が良いようです。もちろん手を怪我をしたことはありませんから、患者さんにはきちんと両手で鍼を打っています。
そして料理をする時は自分の指を切らないように気をつけています。
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