肩甲骨の内側が痛みませんか?

今日は肩甲骨の内側の痛みについて書いてみます。
※このページの最下段に治療実例ページへのリンクがあります。

やっぱりツボがある

背中のツボ

背中のツボ

時々ですが肩甲骨の内側に痛みを訴える患者さんがいらっしゃいます。
この辺りには、鍼灸治療にはかかせない大事な経穴(ツボ)が並んでいます。
例えば太陽膀胱経(たいようぼうこうけい)の魄戸(はくこ)、膏肓(こうこう)、神堂(しんどう)、譩譆(いき)といった経穴などです。

病膏肓に至る

特に膏肓は有名で、「病(やまい)膏肓に至る」という例えがあり、ここが痛むとかなり病状が悪い、とされています。

鍼灸師の間では“超”有名な専門書である「沢田流聞書 鍼灸真髄 代田文誌著」に詳しく書かれているので抜粋して掲載してみます。
かつて沢田健という伝説のような鍼灸師が独自の勉強と解釈で様々な疾患を治していたことを、代田文誌(しろたぶんし)氏が、聞き書きという形で文書に残したものです。
そして武道にある流派の名前のように、「沢田流」という名前が残っています。

膏肓
心兪の外方。肩甲骨の内縁陥中。一般書の神堂に当たる。
〔主治〕胃酸過多症の要穴。

この本では心兪(しんゆ)の外方とされていますが、これは沢田健の独自の解釈です。
現在の教科書とは異なります。

胃酸過多
天膠(てんりょう)と肺兪(はいゆ)と膏肓(沢田先生の膏肓は殆ど神堂と一致す)とへ施灸し、「これで胃酸過多がなほります。」と先生はいう。

胃酸過多
「胃酸過多を一ぺんに治すには膏肓へ灸すればよい。その場合、足の三里へはすえぬ方がよい。三里へすえるとききません。胃酸過多は肝臓の酸と肺臓の辛とが逆になっているのです。そのため肺の方へ酸を吸い上げるのですが、膏肓へ灸するとそれがもとの位におさまります。酸は肝に帰り辛は肺にもどつて治るのです。」

足三里は松尾芭蕉が旅に出る日の朝に必ずお灸をすえていたことで有名ですが、胃酸過多の人がここにお灸をすえると更に胃の働きが活発になって食欲が増し、胃酸過多の症状が悪化します。
足三里と膏肓に鍼を打つ場合はそういうことは起きないということも書かれています。

よくインターネットや雑誌などで、「○○の時はこのツボ」というような安易な治療方法が掲載されていますが、決して素人判断しないでください。
人間の体はそんな簡単なものではありません。

内臓の調子やそれぞれの関連を考えてツボを選んで治療にあたらなければ、痛いところだけ鍼を打つということをやってしまいがちで、体調がすぐに元に戻ったり、治らず悪化したりします。心身全体をみて治療することが重要です。

病膏肓に入る
「俗に病い膏肓に入るといいますが、膏肓に入つた病気は第三期です。初期は第一行(だいいっこう)に出、二期は第二行に出、第三行に出るのは第三期です。そして膏肓は第三行ですから、膏肓に出る病気は皆第三期です。そして膏肓と八椎下(至陽という経穴)とで逆ピラミツトが出来ます。同じピラミツトでも、逆に出て来たのは面倒です。」

第一行というのは、膀胱経の背骨に一番近いところですが、教科書には出て来ません。これも沢田流の解釈です。

第二行というのは、膀胱経の背骨から二番目にあるラインで、教科書に出てきます。
内臓の調子を整える有名な経穴が並んでいます。先の画像でもご覧いただけます。
特に内臓の名前を冠した、肺兪、心兪、肝兪、胆兪、胃兪・・・という経穴があります。
治療の際の多くはこの経穴を使います。

第三行は第二行の外側にあり、先にも述べたように変わった名前の経穴が並んでいます。
そしてここに痛みがあるということは、「病状が進んでいる」、ということを意味します。

原因もいろいろあります

胃酸過多になるにも色々な原因があります。

例えば
・食べ過ぎたり飲みすぎた場合
・体が冷えて熱を作り出そうとして起こる場合
・水分不足の場合(水分摂取が少ない、あるいは肉食が多く消化液を沢山使った)
・ストレスで胃の内膜を保護する粘液が出なくなった場合(胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍になりやすいです)
・甘いものや小麦粉製品を食べ過ぎた場合(糖反射が起こる)
などです。

臨床現場でみる事例として、右側の肩甲骨の内側は水分不足や肉食が多かったり砂糖や小麦粉を多くとっている場合です。
逆に左側の肩甲骨の内側の痛みは暴飲暴食の場合が多く見られます。

暴飲暴食か砂糖・小麦粉

暴飲暴食はわかるとして、砂糖や小麦粉に疑問を持たれるかもしれません。

実はごく僅かな甘いものを飲食しても「糖反射」という生理現象が起きます。
糖反射は胃腸の活動がぴたりと止まる現象です。東大で実験されたそうですが、原因はわかっていないそうです。

ただ砂糖が胃や十二指腸に潰瘍をもたらすことはよく知られていたようです。
例えばショ糖の分子は非常に小さいので、浸透圧が高く空腹時に砂糖が胃に入ると、胃の粘膜が刺激されて胃液の分泌が促進されます。
また同時に副腎皮質ホルモンも刺激するので更に胃酸を増やすことにつながります。
その結果、胃潰瘍・十二指腸潰瘍が多発するとうことです。

糖分は便秘や吹き出物の原因にも

糖反射が起こって便秘になれば、本来排泄すべき毒素を腸から吸収することになるので吹き出物が現れます。
ですから、ニキビや吹き出物を治したいとか、あるいは肌を綺麗に保ちたいとういうのであれば、甘いものや消化されすぐにブドウ糖になりやすい小麦粉製品は控えなければなりません。

治療方針

食べ過ぎないようにすることが第一ですし、砂糖や小麦粉製品も控えた方が良いでしょう。
また精神的なケアも大切です。
そして胃酸をたくさん出すような辛子などは控えて、胃腸に優しい食材を選び、調理方法も検討する必要があり、必ず火を通して胃腸に負担をかけないようにする方が良いでしょう。
コーヒーも胃酸を多く出すので控える方が良いと思います。

肩甲骨の内側だけに鍼を刺しておしまいには出来ません。
根本を治さないと再発しますし、すぐに元の状態に戻ってしまうからです。

先の図を見ていただいて、背骨の上にある「至陽(しよう)」という経穴にも痛みが出だすとかなり悪い状態と思って下さい。
胃の負担も大きく、病状もかなり進んでいる時に痛みが出やすいです。
食べ過ぎ飲み過ぎでも反応がありますが、ストレスや胃酸過多でも痛みがでます。
息を吸い込むと背中が痛い」という人もいらっしゃいます。

背中だけ治療しても治らない

最後になりましたが、この本に記載されていることは、現在とは時代が違うということを理解して下さい。
反応が現れるという点は同じでも、そこだけ治療すれば良いというわけではありません。

代田文誌氏が沢田健の門に入ったのが昭和2年で、初版が16年です。
当時の人達の食事内容や運動量が現代人とは全く異なります。
現代人は飽食の時代と言われるように様々なものを飲んだり食べたりしていますし、自動車や電車、エレベーターにエスカレーターのように様々な乗り物を使っているせいで、運動量が違います。
ですから、現代人に合った基本的な治療(太極療法=心身全体を診て行う治療)をする必要があります。

肩甲骨の内側の痛み(2)

肩甲骨の内側の痛み(3)実例:患者様からの声

背中(肩甲骨の内側)の痛み〜患者様の声

背中(肩甲骨の間)の痛み

も合わせてご覧下さい。

参考文献:沢田流聞書 鍼灸真髄 代田文誌著 医道の日本社

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