前回の続きです。

Insomnia

不眠や寝不足を訴えられる患者さんも治療中によく眠られます。
睡眠には神経やホルモンの働きが関与しています。
自律神経には交感神経と副交感神経という2種類の神経があり、それぞれが交代に働きながら心身のバランスをとっています。
睡眠に関係が深いホルモンはメラトニンですが、他のホルモンも関与しています。

睡眠に関係が深いホルモンはメラトニンです

睡眠を促すホルモン「メラトニン」の働きが高まる午後10時~午前2時の間に就寝することですが、12時以降に寝てしまうと疲労を回復するための「成長ホルモン」が脳下垂体から出なくなります。

メラトニンについて

脳の松果腺から分泌されるホルモンです。
メラトニンの血中濃度は昼に低く夜に高く、睡眠と関連しているとされています。

毎朝決まった時間に日光(或は照明)の光を浴びてメラトニンを減らすことが大切です。
コンピュータ、テレビ、ゲーム、スマホなどで運動不足・昼夜逆転の生活リズムなどの不規則な生活になっている人が多いです。
本当は規則正しい生活で、軽い運動や日光浴などをして、体内時計を正常にしなければならないのです。

そして、PCの液晶画面やスマホのブルーライトが体内時計を狂わせます。
ブルーライトのような強い光は本来、日中に浴びるものです。暗い場所でのスマホ使用も目に負担がかかってよくありません。
脳を眠りに入る状態にするためには、寝る1、2時間前はスマホを使わない方が良いです。
どちらかというと、間接照明に切り替えて部屋を薄暗くしてスマホやテレビ画面を見ないのが良いのです。

昼間に眠くなる場合は、起床6時間後に5分間だけ目を閉じて眠気をリセットします。
朝6時に起きるのであれば12時に、朝7時に起きるのであれば午後1時に5分間だけ目を閉じることになります。

但し、メラトニンには「性腺抑制作用」もあるようで、多く摂取すると月経を止める作用がでることがあり、素人判断による安易な摂取は禁物です。

成長ホルモンについて

名前の通り、子どもの成長にかかせません。「寝る子は育つ」といいますが、やはり十分に眠りをとらないと体だけでなく脳の発達にもよくありません。
大人でも睡眠時に成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンには、運動や労働、怪我などで疲労・破損した体組織を修復・再生する働きがあります。
ですから出来るだけその日のうちに眠らないと、睡眠不足と疲労蓄積で体調を崩してしまいます。
夜更かしをすると肌が荒れるのも、体の修復作用がうまく働かないからと考えられます。

セロトニンについて

脳神経の伝達物質として有名なのがセロトニンですが、これは小腸で95%以上生産されているということが最近の研究でわかってきています。
過度なコンピュータ操作、テレビやゲーム漬けの毎日、運動不足、昼夜逆転の生活リズムなどの不規則な生活がセロトニン神経の弱体化を招いています。
慢性的なセロトニン不足は鬱傾向になったり気がふさぎ込んだり、精神のバランスを乱しがちです。

十分な睡眠がとれないと消化活動もうまくいきませんから、便秘になったり腸内環境が悪化することで脳の活動に影響を与えます。
代謝のおかしくなった患者さんは腰痛や肩こりを訴える人も多いです。

ホルモン以外で気をつけて欲しいこと

入浴について

寝る前にお風呂に入ったりぬるめのシャワーに入ることも睡眠を促します。
熱いお風呂やシャワーを浴びると目が覚めてしまって逆効果ですが、ぬるめの温度でお湯を浴びて体を温めると、体温が下がっていく時に眠たくなっていきます。
ですから、湯冷めをしないように注意をして、寝る前にお風呂やシャワーを利用すると良いでしょう。

眠る前の深呼吸

基本は腹式呼吸です。お腹を膨らませるように呼吸をします。
まず、お腹をへこませるようにして肺に溜まっている息を全て吐きだします。
次に、肺から空気が抜けたと思ったら、今度は口を閉じてゆっくりと鼻から「4秒」かけて息を吸いこみます。
そして「7秒間」息をとめて、「8秒」かけてゆっくりと口から息を吐き出していきます。
横隔膜を上下運動させることで、手足に行き渡っている血液を戻し、体幹にある血液を手足に送ることで、自律神経の状態を整えていきます。

睡眠導入剤と鍼灸治療

鍼灸治療中に眠られる患者さんが多いのです。
それは五臓六腑の働きを整えることで自律神経のバランスが整い、緊張状態からリラックスした状態へ変化したと思われます。
実際患者さんからは、「治療を受けた日の夜はよく眠れた」とか、「治療を受けてしばらくよく眠れるようになった」という話を聞きます。
そういうように治療を続けていただいて、生活改善をしていけば毎晩ぐっすり眠れるようになります。

生活改善とは、食生活の改善や、就寝前の部屋の明るさを調節したり、寝る前はパソコンやスマホを見ないようにするなどの睡眠しやすい状況にすることや、散歩・体操・ヨガなどの軽い運動も必要だと思います。

いきなり睡眠薬をやめるのではなく、鍼灸治療と併用しながら必ず医師と相談し、徐々に止めていくのが良いと思います。
例え漢方薬でも「薬は毒である」ということです。
薬に頼らなくても眠れるようになるのが本来の生き物としての人間らしい生活だと思います。
薬に頼らず生活していきたいという時は鍼灸治療を試してみて下さい。

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不眠症・睡眠障害と鍼灸治療(1)